「少女は夜明けに夢をみる」

(2016年 イラン)

映画「Starless Dreams」の一場面

 イランの首都テヘランにある、殺人、強盗、薬物使用、売春などの罪を犯した少女たちが収容される国営の少女更生施設。
 撮影許可が下りるまでの7年間、交渉とリサーチを重ねたイランのメヘルダード・オスコウイ監督が、20日間で撮り終えた渾身のドキュメンタリーである。
 カメラは歌声と笑顔にあふれた少女たちの日常を軽快なタッチでとらえる一方、本作を支える柱となる監督の真摯なインタビューに胸を開いて応える8人の少女たちを映し出していく。
 叔父からの性的虐待から逃れて家出を繰り返し、浮浪罪で収容されたハーテレという鬱を病む少女は、監督から「君の夢は」と問われて「死ぬこと」と応える。
 少女たちへのインタビューから一様に浮かび上がってくるのは、少女たちが罪人となる前に、伯父や義父からの性的虐待、両親からの暴力、薬物中毒症の家族による危害の被害者であったという悲惨極まりない過去だ。そうした癒やしがたい共通の傷痕を抱えた少女たちにとって、この施設が唯一の安息の場所となっていることもだった。
 釈放が決まった少女が「外は地獄」と不安を訴えるように、彼女たちの未来は何も保証されていない。
 だが、ハーテレを苦しめた叔父が、後日罪に問われたように、「なぜ男と女の命の重みは違うのか」という少女たちの問いかけは、イランのみならず世界にも、社会の理不尽を正していく貴重な一石となるに違いない。
理不尽正す少女の問い